独立型の自主映画等を中心にユニークな上映プログラムを持つスヴニエール映画館の新築設計。(コンペティション最優秀賞、リエージュ市建築賞、ミー スファンデルローエ賞ノミネート作品)ベルギーのリエージュ市の中心地,オペラ座近くにあり、地元の人々に親しまれている伝統のある自主映画館です。

近年、映画界における急速な映写や音響技術の進歩、また経済的な運営効果基準は、映画館という建築のビルディングタイプを画一化する傾向にあります。私達はまずはじめに、この画一的な大型映画館の設計とは異なった、ユニークな空間構成を目指しました。

様々な映画館の設計要求の中で、私達は現代の複合映画館が映画鑑賞をはじめ、街の人々を歓迎できるような質の高いパブリックスペースを設ける事に重点を置きました。

オープンな公共空間として、屋内の2つの大きなホワイエ(1階部分と2階部分)、カフェ,ギャラリー等を設けました。道側よりは、キャノピーを用い て街の人々を歓迎し、1階部分,中庭へと続く広々としたカフェに気軽に立ち寄ることができます。そのアプローチから、自然と上映室へ導かれるように考慮し ました。

4つの上映室は2つのグループに分け、中庭を包んでL字状に配置されています。この2つのグループの大きなヴォリュームは、あまりにも小さい敷地を うまく活用するために、とても小さな敷地にはさまって動けなくなった2つの巨大な身体を連想させるようでもあります。(スケッチ参照)その事により、多々 の諸機能は、2つのグループを包む周辺空間にうまく収まっています。

また、観客の動線(通路、階段等)は、往来の単純動線ではありません。上映室までの通路は迂回し、動線計画に沿って走り、這って進み、または横断しています。特に道側沿いの緩やかに続く階段は、建築と街をつなぐ空間演出をしています。

各々の映画館の間は、透明性の高い大きな宙に浮いたようなホワイエ空間でつながれています。そのホワイエはパブリックスペースとして、地域の人々や 国際的に活躍するアーティスト等のギャラリーとして利用されています。上映室の床はフェルト質の材料で覆われていますが、反対に屋内パブリックスペースの 床は、ミネラルの材質を用いることで、屋内空間での床質の変化をもたせています。

最終的には、街に開かれた複合映画館は、映画館の落ち着いた静けさを各上映室に保ちながらも、それらの間を透明感のあるゆったりとしたホワイエ空間を通して、街の人々が気軽に立ち寄ることができる計画として街の人々に親しまれています。


コンペティション最優秀

発注者 : French Community of Belgium

敷地 : リエージュ市,ベルギー

建築設計 : Shin Bogdan Hagiwara, Thierry Decuypere, Jorn Aram Bihain (V+), BAS

構造 : BAS

現場管理+設備 : Bureau Bouwtechniek

音響 : Daidalos Peutz

写真 : Alain Janssens



5 月 2008
カテゴリ: Architecture, cultural
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